「表記ルール? そんなものウチにはないよ…」そんな時は共同通信社発行『記者ハンドブック』を活用しよう

「表記ルール? そんなものウチにはないよ…」そんな時は共同通信社発行『記者ハンドブック』を活用しよう|スタジオ・ボウズ Illustrator

媒体のクオリティを決定付けるルール

こんにちは、フリーランスデザイナーのスタジオ・ボウズです。

どのような媒体であれ、文章を書く際に下記のようなことで悩んだことはありませんか?

  • 漢字にするか、ひらがなにするか
  • 送り仮名をどう付けるか
  • 全角にするか、半角にするか
  • 「」にするか、()にするか

これらが媒体内や同一の原稿内で不一致となっている場合、それは「表記のゆらぎ」とされ、新聞・通信・放送をはじめとした、特にクオリティの高いメディアではこれらを統一することが求められます。

そのための表記規定・表記ルールが設けられており、記者・ライターや編集者らはそうしたルールを意識しながら執筆・編集・校正を行います。

“ちゃんとしてる感”を出すためにも…

あえてフレンドリーな、フランクな文章を打ち出すことは大いにありえますが、表記のゆらぎはそこと話は別。表記がバラバラなままでは、文章の素人っぽさや雑さの印象が拭えません。

「いや、うちはメディアじゃないし…」と思われる方も多いと思いますが、一般的な企業団体ほか、情報発信を行うさまざまな媒体・サイトにとっても、こうした規定・ルールの統一は媒体全体のクオリティを決定する重要な要素です

文章のいわゆるトーンアンドマナー(トンマナ)の統一とともに、情報発信の信頼性を高めるファクターと言えます

とはいえ、イチからルール作りはムリ…

「表記ルール? そんなものウチにはないよ…」そんな時は共同通信社発行『記者ハンドブック』を活用しよう|スタジオ・ボウズ

とはいえ、大量に存在する表記についてイチからルールを策定するのは膨大な作業であり、そこにリソースを割くのは現実的ではありません。

そんな時、共同通信社が新聞記者向けに発行している『記者ハンドブック』を活用するのが最適解です

同書は漢字・ひらがな表記、送り仮名といった基本的なところから、難読漢字・専門用語・動植物の名称・差別用語・誤りやすい表記など、さまざまな用法・用語について網羅的にルールが策定されています。

私自身本業はデザイナーですが、前職は記者やライターでした。そのため媒体内の表記については同書に準拠してリライト・校正することが多々あり、同書を大いに活用しています

メディア関係だけではなく文章を取り扱うあらゆる業務において、クオリティアップの一助となる『記者ハンドブック』。当記事では、その内容や活用方法についてご紹介していきます。



目次

共同通信社『記者ハンドブック』とは

記者ハンドブック 第14版: 新聞用字用語集

『正しい日本語で伝わる文章を』
漢字と平仮名どちらを使うのか、送り仮名はどう付けるのか、同音異義語の使い分けは?・・・。
用例が豊富な用字用語集と読みから引ける漢字表。外来語の正しい使い方も明記。
一般企業の企画・広報担当者からWEBライターまで、文章を書くすべての人にお薦めする日本語用字用語集の決定版です。



とりわけ放送や新聞は、多くの人々に情報を伝達することが至上命題であり、個性的・情緒的すぎたり、難しくて伝わらなかったり、不快だったり、といった言葉の使い方は避けることが重要となります。

これは一般の企業団体の情報発信でも求められるスタンスであり、同書は一般の企業団体で文章を取り扱う方々にも扱いやすい内容となっています。

最近は4年程度で改訂されており、2023年時点での最新は14版。新語や語句の意味合いの移り変わりにも対応しています。

記者ハンドブックの主な中身

用字用語集

おそらく最も読まれるチャプターで、下記のような内容が載っています。

  • 常用漢字でない漢字・難読漢字などを含む語の言い換え、書き換え、読みがなを付けて使える語
  • 漢字2字以上で構成される熟字訓(訓読みを当てた語)、2つ以上の表記が慣用されている語の統一表記
  • 誤った表記や避けたい語の言い換え
  • 同音漢字の語などで、誤用や使い分けに注意するもの
  • 「現代仮名遣い」による主な仮名遣いの表記例
  • 「送り仮名の付け方」に基づいた統一送り仮名方式の主な表記例
  • 副詞、接続詞などについて、共同通信社で使用する漢字と仮名の書き分けの主なもの。

漢字の表記や送り仮名について、日常的に使う語はほぼ網羅されていると言っていいでしょう。具体例をいくつか挙げてみます。

  • ならびに/および (並びに/及び)→ならびに/および(接続詞の場合ひらがな表記)
  • つく
    • 付く (くっつく、加わる)追い付く、片付く、焦げ付く、仕事が手に付かない、付かず離れず、付き合い、手付かず、寝付き、利息付く など
    • 着く (身にまとう・帯びる、とどく、行きつく、とりかかる、座を占める)足が地に着かない、落ち着く先、交渉のテーブルに着く、住み着く、席に着く、手紙が着く、流れ着く など
    • 就く (ある役目・任務を負う、おもむき従う、去るの対義語)守備に就く、帰途に就く、職に就く、病の床に就く、
    • (点く)→つく (点灯)明かりがつく、ネオンがつく
    • (即く)→つく (即位)皇位につく
    • (以下は慣用でひらがな表記)勢いづく、行きつけの店、板につく、色気づく、顔つき、傷つく、今日はついている、高くつく、近づく、調子づく、はけつける、踏ん切りがつく、まごつく、目つき、病みつき
  • えたい (得体)→えたい、正体
  • むりやり (無理矢理)→無理やり

以上はごく一部です。IMEのおかげで漢字の誤りは発生しづらくなっていますが、それでも執筆中に迷った場合は、辞書のように調べて表記を決めていきます。



誤りやすい語句

慣用句などでよく見られる誤用や適当ではない言い方などが掲載されています。例えば下記のような表現です。

  • 愛想を振りまく→愛嬌を振りまく、愛想がいい
  • 笑顔がこぼれる→笑みがこぼれる
  • 疑心暗鬼を抱く→疑心暗鬼になる、疑心暗鬼を生じる
  • 熱にうなされる→熱に浮かされる、夢にうなされる
  • 被害を被る→被害に遭う、損害を受ける
  • 老体にむち打つ→老骨にむち打つ

差別語、不快用語

性別、職業、身分、地位、人種、民族、地域、病気、身体的な特徴などについて、差別的な表現を適切に言い換える言い回しが掲載されています。

ここでは具体例を挙げませんが、時代の移り変わりで不適切とされるようになった語句も数多くあります。迷った場合はチェックしておきましょう。

数字の書き方

洋数字・漢数字、いずれを使うかについて、基準や表記が示されています。

  • 洋数字→数量、順序
  • 漢数字→固有名詞、慣用句、歴史用語など
    第二東京弁護士会、衆議院第一議員会館、自動二輪免許、第三セクター、一日も早く会いたい、二度と繰り返さない、二・二六事件、三女・四男 など

当然、カスタマイズも

以上ごく一部ですが、『記者ハンドブック』に掲載されている表記ルールをご紹介しました。

同書で適切でないとされている表記や表現でも、ブランディングや哲学を示すために使いたいというケースが当然あると思います。公序良俗にならって、企業団体ごと、媒体ごとに適宜カスタマイズしてルールを作っていくことになります。



AIとの併用でよりスピードアップ

「表記ルール? そんなものウチにはないよ…」そんな時は共同通信社発行『記者ハンドブック』を活用しよう|スタジオ・ボウズ

作業時間が限られている、校正役がいない、といったケースも考えられます。そうした場合はChatGPTをはじめとしたAIを活用することもひとつの手段です。

ルール自体は『記者ハンドブック』に準拠し、統一させる実作業はAIで、といった使い分けをすることで、より作業をスピードアップさせられます。

まとめ~文章のスキルアップにも

「表記ルール? そんなものウチにはないよ…」そんな時は共同通信社発行『記者ハンドブック』を活用しよう|スタジオ・ボウズ

以上、『記者ハンドブック』を用いた表記ルールについてご紹介しました。

目立つ要素とは言えませんが表記の統一とそのためのルールは、文章の品質、ひいては記事や媒体、サイト全体のクオリティを確実にアップさせてくれます。

また同書を逐一チェックすることで、自分の中での日本語の誤りに気付くきっかけにもなり、執筆を生業とする方はもちろん、プレスリリースを書く広報担当の方などにとっても、文章力向上につながるでしょう。

キーボードを叩くその横に置いて、文章や情報の品質向上にぜひ活用してください。

デザインのご用命承ります

スタジオ・ボウズではフライヤー・ポスター等の紙媒体のデザイン、WEBサイトのデザイン・コーディング、動画撮影・編集等、さまざまなメディアでの制作に対応しております。

フリーランスの強みである柔軟性を活かしつつ、さまざまな媒体の特性やトレンドを踏まえた横断的なご提案、スピーディな制作・納品を実現します。

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