最近読んだ本|会田誠『性と芸術』

スタジオ・ボウズ|京阪神で活動するフリーランスデザイナー よしなしごと

会田誠『性と芸術』

炎上作を発表する芸術家の頭ん中

現代芸術家の会田誠さん。取り立ててファンというわけではありませんが、たびたび批判(というか罵倒)にさらされる過激な作品をあえて、なぜ発表するのだろうか、その作者の頭ん中が知りたいということで拝読しました。

四肢を切断された裸の少女が描かれた、最大の問題作とされる『犬』。正直、見れば困惑、不快や嫌悪という感情が先立つ同作について、会田さん自身によるかなり込み入った解説がメインです。

「芸術がいつも心地よいものであるはずがない」という意志が漂いながらも、「現代芸術かくあるべし」といった主張が趣旨ではなく、いち芸術家の思考の顛末、同時代と格闘し、あるいは一石を投じるためにいかに「作為」を働かせたか、そのモノローグといった印象。

「もちろん分かっている─美術作品の解説なんて作者本人はしない方がいいことは。だからこんな悪趣味は一生にこれ一度きりとする」と、自虐か謙遜か、「はじめに」においてそんな書き出し。野暮と自覚しながらなぜ自作解説するのは、作品批判への「抗議」でありSNSの140字ではまるで足りないとします。

「表現の自由」がポリコレの過剰チェックにさらされ、二言目には「説明責任」という自己批判を強いられる現代。『犬』の発表は1989年ですが、わかりづらいもの・不快なものへの不寛容は当時よりも確実に強まっています。説明したところでどうせわかってもらえないとしつつ、そうした圧力に飄々と対峙するタフさを感じる1冊でした。

性と芸術
著者 会田誠
出版社 幻冬舎
発売日 2022/7/21