こんな方向けの記事です
- 印刷物制作が未経験のWeb/UIデザイナー、イラストレーターの方
- ZINEや同人誌、リトルプレスを作りたい方
- 自力でチラシやポスター、カードなどを作りたい方
印刷を巡る炎上の背景に、ノウハウの低下?
印刷物を巡ってのトラブルで炎上している場面を、SNS等で目にすることが増えています。印刷物制作でのノウハウや知識の不足があるのでは?という印象を持ちます。
ペーパーレス化やデジタル化が進むとともに、資材高騰の煽りを受け、そもそも紙は作らないという傾向が強くなっています。技術やノウハウを継承・共有する足腰が弱まっていることも背景にありそうです。
私は紙媒体のデザインからこの仕事を始めたクチなので、Webデザインも行う現在でも、肩書は「デザイナー」。「紙もWebもやる」という意識に基づいています。一方、昨今は「Webデザイナー」や「UIデザイナー」など、肩書が細分化されています。そういう肩書の方は印刷物制作が未経験、というのも珍しくありません。
また、オンデマンドをはじめとするネット印刷の手軽さや、誰でもそれっぽいデザインが作れるAIツールによって、非デザイナーでもチラシやカードを作る機会が増えました。デザインを作るハードルは劇的に下がっていると言えます。
しかし、「印刷という物理的なプロセス」のルールは、昔も今も変わっていません。画面上では完璧に見えていても、ルールを押さえないまま入稿してしまうと、意図しない仕上がりになるなど思わぬリスクを招きます。
そこでこの記事では、印刷データを正しく仕上げるための要のひとつ「トンボ(トリムマーク)」について、初心者がハマりやすいNGポイントと、プロが実践する正しい作り方を解説します。
- そもそもトンボとは
- Illustratorでのトンボの設定方法
- 「効果」→「トリムマーク」
- 「オブジェクト」→「トリムマークを作成」
- どちらがいいか印刷会社に確認を
- トンボの扱い各社比較
- トンボ周りで気をつけたいNGポイント3つ
- NG①塗り足しがない
- NG②「効果 」→「トリムマーク」をかけたまま入稿する
- NG③「塗りと線」に色が残ったままトンボを作る
そもそもトンボとは?
トンボ(トリムマーク)とは、主に下記の機能を持つ線です。形が昆虫のトンボに似ていることからこう呼ばれています。
- 断裁位置…重ねた紙を一気に切り落とす刃の位置を示します。
- 塗り足し…断裁時のほんのわずかな「紙のズレ」でフチに紙の地色(白)が出ないよう、余分に背景を塗っておくエリア(仕上がり位置より3mm外側)を示します。
- 位置合わせ(色のズレ防止)…カラー印刷(CMYK)の版のズレを防ぐ基準線になります。
トンボ各部の呼び方

- 外(そと)トンボ…仕上がり位置(裁断位置)から外側3mmの塗り足しを示すための線
- 内(うち)トンボ…仕上がり位置を示すための線
- センタートンボ…平行に裁断するための目安となる線
イラレでのトンボの付け方
①「効果」→「トリムマーク」
矩形のオブジェクトを選択した状態で、「効果」メニューからトリムマークを選びます。
この方法では、オブジェクトとしてトンボを選択することができませんが、仕上がりサイズを変更してもトンボが追従するため、トンボを作り直す必要がありません。
②「オブジェクト」→「トリムマークを作成」
矩形のオブジェクトを選択した状態で、「オブジェクト」メニューから「トリムマークを作成」を選択します。
この方法では、トンボ自体はオブジェクトとして選択できます。ただし①の方法のように追従はしてくれないため、仕上がりサイズを変更する際はトンボを作り直す必要があります。
どちらがいいか印刷会社に確認を
上記どちらの方法もトンボとしての機能は同じです。どちらがいいというより、発注先・取引先の印刷会社に確認しましょう。
ネット印刷であればデータの作り方を紹介するWebページで、たいてい解説が掲載されています。
感覚としては『②「オブジェクト」→「トリムマークを作成」』の方法を推奨している会社が多い印象です。
トンボの扱い各社比較
中には、アートボードサイズを仕上がりサイズとしてトンボが不要な会社もあります。この点も印刷会社の仕様を確認しましょう。
著名なネット印刷である「プリントパック」「グラフィック」「ラクスル」の各社の仕様について、下記にまとめました。
いずれにせよ、各社でテンプレートファイルが配布されています。それに基づいて制作するのが安全でしょう。
| プリントパック | グラフィック | ラクスル | |
| トンボ | 必要 | 必要 | 必要 |
| アートボードのサイズ | 仕上がりサイズよりひとまわり大きいサイズ | 仕上がりサイズ | 仕上がりサイズよりひとまわり大きいサイズ |
| テンプレート | 配布ページ | 配布ページ | 配布ページ |
トンボ周りで気をつけたいNGポイント3つ
NG①塗り足しがない

厳密に言えばトンボと直接関係がありませんが、塗り足しがないと紙の端に細い白フチが生じるリスクが高まります。
AIツールなどで作られたであろうチラシで、この白フチが出ているものを巷でちょくちょく見かけます。ちょっとかっこ悪い残念なケースです。Webでいう「Viewport」とは違い、印刷では「裁断時のズレ」を考慮する必要があります。
印刷所では何千枚もの紙を重ねて裁断するため、どれだけ精密な機械でもコンマ数ミリのズレが生じます。また湿気やインクで紙自体がわずかに伸び縮みします。ここで塗り足しがないと、ズレのために紙の地色(白)が露出します。
塗り足しがあれば、少し外側に裁断されたとしても色を塗って(伸ばして)いるため、紙のフチまで色が付いた状態にできます。必ず設定しましょう。
NG②「効果 」→「トリムマーク」をかけたまま入稿する

「効果」→「トリムマーク」でトンボを作った場合、そのままで入稿データとするとエラーとして再入稿になる可能性が高いです。
なぜならこの方法ではトンボは実線ではなく、見た目(アピアランス)として表示されている状態。そのため、システム上ではトンボが存在しないことになります。
そのため必ず「アピアランスを分割」し、実線化しましょう。
NG③「塗りと線」に色が残ったままトンボを作る

長方形ツールなどでオブジェクトを作ると、「塗り」「線」に色が入っていることがあります。この長方形を元にしてトンボを作成すると、線幅や色が付いたトンボになってしまいます。
意図しない仕上がりになるおそれがあるため、塗りと線はナシに設定してからトンボを作りましょう。
まとめ
デザインツールやネット印刷の発達によって、誰でも気軽に紙モノを形にできる時代になりました。しかし、どれだけデジタル技術が進歩しても、印刷の物理的なプロセス自体は変わりません。
今回ご紹介した「トンボ(トリムマーク)」の知識は、一見すると地味で面倒なルールに見えるかもしれませんが、しかし制作物を意図通りの綺麗な形で世に送り出すために絶対必要なプロセスです。
当然ながらWebとは違い、印刷物は印刷してしまうと後戻りできません。こうした小さなチェックが時間と予算、そしてクライアントからの信頼を守ります。ぜひ印刷物制作で実践してみてください。
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